酒田市城輪柵跡  
   
 
 それを私自身について見れば、色が黒いこと、毛深くないこと、眼窩が窪んでいないことなどの、反アイヌ的要素のみが目立つ。しかし全くアイヌ的要素がないかというと、そうでもない。アイヌ人は頭が大きく、六十aぐらいが普通である。そして私も六十aの帽子を被る。アイヌ酋長の冠は、私の頭にぴったりで、彼らを驚かせる。九人兄弟のうち、頭でっかちは私だけだが、それをアイヌの隔世遺伝によるものでないと言い切ることもできない。
 −−かくてアイヌ的特徴を余り持たない私が、蝦夷の子孫だというわけも、おわかりいただけたのではないだろうか。

随筆『馬の骨』からの『蝦夷』書き写し 了