酒田市城輪柵跡  
   
 
 私がこれまで「牛房野峠」と呼んできたのが、ここにいう「杉ノ入超」のことである。山刀伐峠は、標高が五一〇bで、芭蕉が「高山森々として一鳥声聞かず。木の下闇茂りあひて、夜行くがごとし。雲端につもふる心地して、篠の中踏み分け、踏み分け、水をわたり、岩につまづきて、肌につめたき汗を流して」越したことで有名な峠。それよりニ三0bほど高い。子供のころ、私も山刀伐の旧道を何回か越したが、芭蕉の文が誇張でないほど、それはひどい走路で坂道であった。また 両峠の中間にある背名坂峠は、山刀伐よりほんの少し高い峠だが、北斜面の急坂はもっときつかった。それらに較べて牛房野峠は、道のりは長いが、勾配は比較的なだらかであった。南部駒移入の安全度は、最も高かったと見てよいと思う。部落内に「馬立て場」などの旧地名も残っている。